化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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TLC等のRf値・移動率・移動比・移動度の解説

Rf値・移動率・移動比・移動度とは

Rf値とは、薄層クロマトグラフィー (TLC) やペーパークロマトグラフィーなどの平面クロマトグラフィーで、試料が展開液によって固定相内で移動する割合のことです。

Rf値は移動率や移動比、移動度ともいいます。この、Rf値のRfはRate of flow の略です。

Rf値の計算方法

Rf値は、クロマトグラフィーにおいて次のように計算ができます。

Rf値 = (試料をつけた原点から溶質のスポットの中心までの距離) / (原点から展開液の溶媒先端線までの距離)

溶質のスポットの中心とは、検出された発色などが最も強い点です。

Rf値は0~1の値をとり、Rf値が0のものは原点にとどまり、Rf値が1のものは前端線とともに移動したことになります。そのため分析には目的である試料のRf値が0.1~0.7の値となるような実験を行うことが望ましいとされています。

このRf値は、カラムクロマトグラフィーにおける保持時間や保持体積に相当する物質固有の値です。そのため、Rf値は本来同じ物質を、溶媒や温度などが同じ条件で分離すれば、ほぼ同じ値になるはずです。しかし、実際にはRf値はばらつくことが多くあります。

Rf値がばらつく理由は、展開溶媒の移動速度が、展開槽内の展開溶媒蒸気の飽和度の違いや展開槽外部の温度の違いに大きな影響を受けやすいことや、固定相の活性を均一に保つことが難しいことに由来しています。

そのため、Rf値は物質同定の目安の値として利用することが適切であり、実験のRf値と文献値との比較だけで物質の同定を行うと、間違った判断をしてしまう可能性もあります。

また、単品や混合物の標準品がある場合は、試料を標準品と同時にクロマトグラフィーで分離を行ったり、試料と標準品を重ねてスポットして分離すると、適切な判断ができます。