NMRの温度可変測定
核磁気共鳴 (NMR) 測定の際に、サンプルの温度を変化させて測定が行われることがある。これを温度可変測定ということがある。
NMR測定にて、試料の温度を変化させる測定は錯体構造や立体配座の決定、熱力学定数の測定などで利用される。
低温でのNMR測定では、分子運動が抑制されるため、核磁気共鳴の測定に必要な時間よりも速い化学交換や錯体生成、分子の配座間の平衡などが観測できる。
NMRの温度可変測定と錯体生成
例えば、錯体生成の平衡が速いAとBが錯体を生成する平衡を考える。
A + B AB (錯体)
常温で、この試料のB由来のシグナルについてNMR測定を行うと、錯体を形成しているABのBのシグナルと、錯体を形成していないBのシグナルが現れる場合、常温では平衡が速いために二つのシグナルが平均化され、一本のシグナルのように見える。
しかしながら、この試料の温度を下げていくと、徐々に幅の広いシグナルとなり、その後2本のシグナルがはっきりと分離され、錯体を形成していないBのシグナルと錯体を形成しているBのシグナルが見えるようになる。
温度と化学シフトの変化量の関係から、錯体生成定数などの熱力学定数を決定する場合もある。