金属の電気伝導性について
固体はその電気伝導性によって、金属、半導体(semiconductor)、絶縁体(insulator)の3種類に分類される。
金属のエネルギーバンドの特徴は、電子を含むエネルギーバンドのうちエネルギーが最も高い部分が一部しか専有されていないことである。
金属では、エネルギーバンドにパウリの排他原理に従って、下のエネルギー準位から電子を2個ずつ詰めていって、すべての電子が入りきったところの準位がフェルミ準位(Fermi level)となる。フェルミ準位のことをEFで表すことがある。これは絶対零度での最高非占準位に当たる。金属ではフェルミ準位のすぐ上にも連続して空の準位があり、この部分に飛び上がった電子が自由に移動できることによって高い電気伝導性が生まれる。
金属では、電流は電子によって運搬される。電流が流れるのは、加えた電場によって電子が一方向に加速され、正味の電子の流れが生じるためである。この電流に寄与できるのは、対をつくっていない不対電子だけである。このような不対電子は、電場のごく小さいエネルギーによってフェルミ準位付近の電子がすぐ上の空の準位に励起されて生じる。よって、金属のような電気の良導体となるためには、バンドの一部が満たされ、一部が空いている必要がある。これに対し、半導体や絶縁体では、価電子帯は上までほぼ完全に満たされているため、電流のキャリヤーである不対電子は容易に生じない。
1属金属の電気伝導性について
1属金属のような1原子あたりに1個の価電子をもつ金属の場合を考える。例えばナトリウムはフェルミ準位が3sバンドの中央にある。この場合には、電場がかかるとフェルミ準位に近い準位にある電子はすぐ上の空の準位に容易に励起される。よって、高い電気伝導性を示す。
2属金属の電気伝導性について
2属金属のような1原子あたりに2個の価電子をもつ金属の場合を考える。例えばマグネシウムは価電子を全部3sバンドに入れるとすると上まで完全に満たされる。よって絶縁体になるように考えられるが、sバンドとpバンドは非常に幅広く、エネルギー的に互いに重なる部分がある。このため、sバンドの最上部の一部がpバンドに移り、フェルミ準位はこのsバンドとpバンドが重なった部分の中ほどにあり、どちらのバンドでもそのすぐ上にある空いた準位を使うことができる。このため、マグネシウムはナトリウムど同程度の良導体となる。
12属金属である亜鉛やカドミウムも同様である。さらに1原子あたり3個の価電子をもつ金属ではフェルミ準位はpバンドの下の方にある。
金属の温度と電気伝導性について
金属では温度が上昇すると電気伝導率が低下する。電流のキャリヤーである不対電子の数は、温度を上げてもあまり増えない。しかし、温度の上昇に伴って格子振動は激しくなる。この格子振動とキャリヤーである電子どの相互作用によって電子が散乱されるため、高温になるほど、電子の移動が格子に邪魔されることになる。これが、金属では温度の上昇に伴って電気伝導率が低下する原因となる。