化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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両親媒性物質と界面での膜について

両親媒性物質について

親水部と疎水部を一つの分子中にもつ物質を両親媒性物質という。

両親媒性物質は、溶液中や界面で配向する。そして、両親媒性物質は吸着膜やミセルのような分子集合体を形成する。

油と水の界面、空気と水の界面、油と空気の界面のように界面を形成する二つのバルク相は相対的に疎水的な側と相対的に親水的な側がある。ここでのバルク相とは、流体のうち界面にふれてない部分のことをいう。

界面吸着膜(Gibbs膜)について

両親媒性物質が水や油のようなバルク相に溶解している場合を考える。このときバルク相から界面に配向吸着する。こうして形成された界面膜を界面吸着膜という。界面吸着膜のことをGibbs膜ということもある。

界面吸着膜を形成している分子とバルク相に存在する分子は平衡状態にある。そのため、バルク相に存在する両親媒性物質の濃度や系の圧力を変化させることで、吸着膜の状態を制御することができる。

不溶性単分子膜(Langmuir膜)について

両親媒性物質がバルク相に溶解しない場合を考える。

このとき、界面に両親媒性物質を分子分散状態で展開することで、界面に膜を形成することができる。この膜を不溶性単分子膜や展開分子膜、Langmuir膜という。

不溶性単分子膜は1分子当たりの平均の界面専有面積を変化させることで、膜の状態を制御することができる。

不溶性単分子膜をガラス板上や雲母板上に積み上げることで累積膜を形成することができる。この累積膜のことをLangmuir-Blodget膜やLB膜ともいう。

両親媒性物質の分子集合体について 

両親媒性物質の分子集合体は、溶質分子間や溶媒分子間での分子間相互作用によって形成される。このとき、共有結合の形成などは関与しない。

ここで、エネルギーについて考える。

共有結合を形成するエネルギーは100~300 RT(250~800 kJ mol-1)程度である。

一方、分子間相互作用に関するエネルギーは~10 RT(~ 25 kJ mol-1)程度である。

ここでエネルギーの単位は、気体定数Rと温度Tの積であるRTで表されている。

分子間相互作用に関するエネルギーは小さく、分子集合体の形成は温度や圧力、両親媒性物質の濃度や種類に大きく影響される。そのため、多様な分子集合体が形成される。

分子集合体における分子間相互作用について

分子間相互作用には、次のような相互作用が影響する。

  • 電荷ー電荷の相互作用(Coulombエネルギー)
  • 電荷ー双極子の相互作用
  • 双極子ー双極子の相互作用(Keesomエネルギー)
  • 電荷ー無極性の相互作用
  • 双極子ー無極性の相互作用(Debyeエネルギー)
  • 無極性ー無極性の相互作用(London分散力)
  • van der Waals相互作用(水素結合エネルギーも含む)

このため、水溶液中でのミセル形成を例に挙げると、水ー疎水基間、水ー水間、疎水基ー疎水基間、水ー親水基間、親水基ー親水基間の電荷間相互作用やvan der Waals相互作用が複雑に影響しあっていることになる。