化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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高分子の構造・重合度・分子量の解説

高分子とコロイド粒子の違いとは

高分子(ポリマー、Polymer)とは、1000以上の原子が鎖状に共有結合してできた分子です。

コロイド粒子とは、小さな分子が物理的な力で凝集してできたものです。

この高分子とコロイド粒子の違いは1917年にStaudingerにスイス化学工業協会で"ゴムの長鎖状構造式"にて提唱されました。

日本でPolymerを高分子と訳したのは、櫻田一郎であり、彼は日本の高分子研究の先駆者といわれています。

高分子の構造

 高分子の1次元鎖状に配列している部分は骨格鎖とよびます。骨格鎖の構成元素の大半は炭素Cです。他にも、ケイ素S、酸素O、窒素N、硫黄Sなどから構成される骨格鎖もあります。

高分子の繰り返し単位をモノマー構造単位とよびます。

高分子は、その性質を担う様々な残基からなる側鎖をもっています。

高分子の重合度と分子量

高分子を構成するモノマーの数を重合度とよびます。この重合度のことをD_p(Degree of polymerization)と表すこともあります。

高分子の分子量をM、モノマーの分子量をM_0とすると、高分子の分子量は次の式で与えられます。

M = D_p × M_0

様々な測定により、平均分子量を求めることができますが、測定方法により求めることができる平均分子量は異なります。

数平均分子量\overline{M_n}:数平均分子量は、高分子溶液の氷点降下、沸点上昇、蒸気圧、浸透圧などの測定によって求めることができます。

重量平均分子量\overline{M_w}:重量平均分子量は、光散乱の測定によって求めることができます。

Z平均分子量\overline{M_z}:Z平均分子量は、遠心沈降平衡の測定によって求めることができます。このzはドイツ語の遠心zentrifugeが由来です。

高分子の溶液や高分子の溶融体の粘弾性といった性質は、高分子の重合度 D_pに大きく依存することが知られています。しかしながら、高分子の個々の重合度はすべて同じというわけではありません。そこで、多くの場合高分子の重合度の分布を考えます。

高分子の数平均重合度・重量平均重合度・粘度平均重合度・Z平均重合度

ここで高分子の重合度をi、重合度iの高分子の数をN_iとします。それぞれ、数平均重合度重量平均重合度粘度平均重合度Z平均重合度があり、それぞれ以下の式で定義されています。

数平均重合度:\overline{Dp_n} \equiv \frac{\sum_{i}N_ii}{\sum_{i}N_i}

粘度平均重合度:\overline{Dp_\eta} \equiv (\frac{\sum_{i}N_ii^{1+\alpha}}{\sum_{i}N_ii})^{\frac{1}{\alpha}} \alpha = 0.5-0.8

重量平均重合度:\overline{Dp_w} \equiv \frac{\sum_{i}N_ii^2}{\sum_{i}N_ii}

Z平均重合度:\overline{Dp_z} \equiv \frac{\sum_{i}N_ii^3}{\sum_{i}N_ii^2}

粘度平均重合度の\alphaは、高分子と溶媒の組み合わせによって変化します。これは固有粘度に関する実験式\eta = K(D_p×M_0)^\alphaによって求めることができます。

これらの重合度にモノマーの分子量M_0をかけると、数平均分子量粘度平均分子量重量平均分子量Z平均分子量が得られます。

また、横軸をi、縦軸をN_iとしたグラフの横軸の重心が数平均重合度となります。

横軸をi、縦軸をN_iiとしたグラフの横軸の重心が重量平均重合度となります。

横軸をi、縦軸をN_ii^2としたグラフの横軸の重心がZ平均重合度となります。

横軸をi、縦軸をN_ii^{1+\alpha}としたグラフの横軸の重心の\alpha乗根が粘度平均重合度となります。 

また、Z平均重合度≧重量平均重合度≧数平均重合度の関係が成り立ちます。ここで、等号は、一つの重合度しかない分布で成り立ちます。この分布のことを単分散分布ともいいいます。また、Z平均分子量≧重量平均分子量≧数平均分子量の関係も成り立ちます。