化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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二酸化炭素の分離、回収技術についてまとめ

日本化学会の会員に毎月送られているであろう"化学と工業"という冊子。読まずに部屋に隅に積んでいる人も多いのではないでしょうか。今回はその冊子の中から、特集 "カーボンニュートラル~化学が創る持続可能な社会~ 3 CCSと二酸化炭素分離・回収技術開発"についての紹介です。

CCSとは?

大気へのCO2の排出量を削減するために重要な技術としてCCS(Carbon dioxide capture and storage, 二酸化炭素回収・貯蔵)がある。

引用元:化学と工業 vol.71-5 May 2018 

地球温暖化の原因の一つといわれる二酸化炭素の大気中への排出量を減らすのは非常に重要な技術の一つといわれています。二酸化炭素は、火力発電所や製鉄所などで排出されるわけですが、これを分離、回収して、地中や海底などの貯留槽に圧入する技術がCCSというわけです。

分離回収の技術の種類は?

分離回収の技術は大きく分けて3種類あります。

分離回収技術 吸収法 吸着法 膜分離法
適用規模 大~中規模 中~小規模 大~小規模
適用圧力 常圧~高圧 常圧~高圧 中圧~高圧

引用元:化学と工業 vol.71-5 May 2018 

 吸収法、吸着法、膜分離法の3種類があり、それぞれ、適用規模や適用圧力が異なることがわかります。

吸収法とは?

吸収法とは,CO2を可逆的に吸収・解離する吸収剤を用いる方法である。

引用元:化学と工業 vol.71-5 May 2018 

吸収法にも、化学吸収法と物理吸収法があります。

化学吸収法は、ガスに含まれるCO2を液体や固体の吸収剤に化学的に反応させた後に、加熱などの逆反応によってCO2の解離と吸収剤を再生する技術です。

吸収剤は、液体と固体の2種類があります。液体はアミンや重炭酸塩などの水溶液が用いられます。固体はアミン類を多孔質担体に吸着させた複合型吸収剤や酸化カルシウムなどの塩類などを用います。

物理吸収法は、ヘンリーの法則と各ガス成分の吸収液への溶解度の差を利用するものである。CO2の分圧が高い場合に適している方法とのことです。

フラッシュドラムなどによる減圧操作で吸収液に溶解しているCO2を回収しているそうです。

吸着法とは?

吸着法は,吸着剤を用いて吸脱着することで分離・回収する。

引用元:化学と工業 vol.71-5 May 2018 

吸着法にも化学吸着法と物理吸着法があります。

化学吸着法は化学反応を利用する技術です。

物理吸着法はファンデル・ワールス力を利用する技術です。

また、吸着したCO2の脱着に圧力差を用いる場合は、圧力スイング吸着(PSA法)、温度差を用いる場合は、温度スイング吸着(TSA法)とよばれるそうです。

膜分離法とは?

膜分離法は,基本的に膜のガス供給側と透過側のガス成分の濃度差(分圧差)を駆動力として分離するもので,主にCO2を選択的に透過する膜の開発が行われている。

引用元:化学と工業 vol.71-5 May 2018 

膜分離は、分離機構によって、分子ふるい、溶解拡散もしくはキャリア輸送などがあるようです。また、材料にも、有機、無機、有機無機ハイブリッド材料があります。

二酸化炭素の回収・吸着の方法にも、いくつもの種類があり、それぞれ特徴があるようですね。こういった技術が次々と実用化されていくといいなあと思います。

特集の全文が読みたい人は"化学と工業"の5月号をご覧ください。たぶん、大学の図書館には置いてあるのではないでしょうか。また、化学系の大学院生なら持っている人もいると思います。別に日本化学会の回し者ではないですし、宣伝したところで1円もメリット無いんですけどね。